あまどさんとのリレー企画・そのさん!

2017.05.26 Friday

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    わーい!いつの間にやらもう三回目!

    素晴らしい小説を書かれる事で有名なあまどさんとのリレー企画・第三段!

    テーマは「なごみ探偵」です!しいたくのあほパートはさておき、あまどさんの本格ミステリ&サスペンスな展開をお楽しみください!ではどうぞー♪

     

     

     

     

     

    おいおい、とんだメンバーが揃っちまったよ。と、トド松警部補の目つきがジトりと細む。なごみ探偵おそ松の事となると、途端にポンコツと化すチョロ松警部は既に使い物にはならない。ならばもう一人の警部に頼るしかないと一松に目を配るが、その姿はべったりとおそ松に付き纏われていた。

    「ねえねえ、何してんのー?」

      捜査を続けるべく、鑑識の十四松と共に死体の検証を続けるが、二人の間におそ松は体を滑り込ませる。肩に乗せられた手を一松は払い除け、十四松は手をそのままにほんのりと頬を色付かせ、困ったように微笑んだ。
      邪魔しちゃ駄目だよ。と優しく咎められるが、おそ松は返事だけ威勢良く返し、舌の根の乾かぬうちに十四松の手にしていたポリ袋を掴む。

    「うわぁ……綺麗ー!」

      制止を掛ける一松の声を無視し、外から射し込む日射しにそれをかざす。小さなポリ袋に入れられたオレンジにも似た赤い石は、光りを取り込みながら中で無数の輝きを放ち、おそ松の瞳孔を同色に染め上げた。
        こらこら。とトド松がおそ松の腕をやんわりと掴み、その腕を下ろす。

    「現場の物で遊ばないで」

      きょとんと瞬きを繰り返すおそ松の視線を捉え、顔を横にふる。怒ってますよというアピールの為ムッとした表情も浮かべるが、伝わっているのかいないのか、おそ松はえへへへと笑うだけであった。

    「ねえねえ、それ何ぃ?」

      鑑識へと袋を返すトド松に付きまとい、
    おそ松が問う。兎のように跳ねながら落ち着きなく左右へと肩越しに顔を覗かせ、ピタリと背中へと貼り付く。
      ンン″ッ。と喉奥で誰かが態とらしく咳をしてみせた。その声に顔だけを振り向かせれば、二つの感情を表す表情を器用に浮かべていたチョロ松が、得意気な笑みを浮かべていた。

    「それはカーネリアンと言うんだよ、おそ松君」

      屋敷の石床がチョロ松の磨かれた革靴を反射し、足音さえも優雅さをうかがわせる。それに合わせるかのようにチョロ松もゆったりと歩み、おそ松の横に並んだ。

    「カネ……?」
    「カーネリアン。一般的に積極性を高め、新しい事を始めるときの迷い事を払拭する効果があるらしいね。語源はラテン語で肉という意味、または新鮮という意味する言葉からもきているらしい」

      既に害者となってしまったカラ松も、本は企業家だったからね。持っていたって可笑しくはないはずだよ。と珍しくそれらしいコメントを溢すチョロ松に、トド松は口をぽかんと開け、言葉を失くした。

    「へぇー!なんかよく分かんなかったけど、チョロさん凄ぉい!」

      キャッキャと女子大生のようにおそ松がはしゃぎ、チョロ松の腕へと絡み付く。デレデレと鼻の下を伸ばすチョロ松の顔は既に先程の面影を残していないが、一松は気にも止めず考え込むように顎へと手を沿えた。

    「とすれば、やはりコイツに恨みを持った者の犯行か」

      物取りならば場を荒し、所持品だって奪って行くだろうと理由づける。

    「第一に何故このバカデカい屋敷に使用人が一人も居ない?  聞けば今回の通報も、コイツが死の間際に連絡して発覚したそうじゃないか」
    「はい。履歴は害者が手にしていた携帯に残っています」
    「であれば少なからず、犯行はその時間帯に行われているはずだ。犯人も余程せっかちなんだろう、殺す気で刃物を突き刺したにも関わらず息絶えるところまで見届けないなんて。いや、もしくは余程の自信家か……?」

      脳内整理を始める一松に、トド松は手帳を広げながら肯定する。危惧していた捜査の滞りは思いの外順調に進み、不謹慎にもトド松の頬が緩んだ。

    「あっ!!」

      唐突におそ松が声をあげ、閃いたとでも言いたげに人指し指を立てる。その声に肩を跳ねさせた一同が一斉におそ松へと注目し、次の言葉を待つ。

    「俺、犯人分かっちゃったかもぉ」

      場にそぐわない柔らかな声音で呟き、ふにゃりと微笑んだ。

    「……っはぁ?!ふざけるのも大概にしろ。重要参考人も事情聴取も何もないまま、分かるわけないだろ!」

      殺人鬼さながらの表情を浮かべ、一松がおそ松に勢いよく歩み寄る。今にも掴みかからんばかりの迫力だが、おそ松は立てた指を顎に沿え、愛らしく首を傾げた。間に割り込むようにチョロ松が立ち塞ぎ、一松と対立する。

    「まぁまぁ一松警部。まずは彼の見解を聞いてみましょうよ」

      ね?  と一見穏やかな表情を浮かべて見せるが、右手はおそ松を隠すように背へと沿え、それ以上近付くなとばかりに左手で牽制する。
      一松は忌々しげに小さく舌打ちをし、腕を組みながら顎で促した。その様子に勝ち誇ったように口端を吊り上げ、後ろに立つおそ松へと極上の笑みを見せながら体を横へとずらす。
      開けた視界におそ松は満足気に一呼吸し、勿体ぶるように口を開いた。

    「……犯人は……」
    「…………」

      長い間は傍聴者の心臓を高鳴らせ、生唾が喉を通る。

    「犯人は……?」

      手汗握る瞬間に、チョロ松が問う。

    「犯人は……この世の何処かにいます!!」

      静けさが辺りを包み込み、チョロ松とおそ松以外の者が表情を消した。

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

     

    既に捜索どころではなく、まるで幼稚園のような風景に十四松は苦笑いを浮かべた。
      犯人逮捕というよりも、通名であるなごみ探偵の名に相応しく、刺々しい場の空気を和ませるのがおそ松の仕事だ。
      何度か仕事を共にしていれば要領を得てくるのだが、やはり初対面の一松警部にとっては許容の範囲を逸しているのだろう。トド松警部補が間に入らなければ話にならず、チョロ松警部が入れば火に油を灌ぐこととなる。
      誰が悪い、というわけではないんだけれども。と十四松は独り言ち、混沌とした輪の中に足を踏み入れた。

    「えーっと……じゃあ一応念の為に、ね?  そのマスクに着いてる血痕を、採取させてもらえるかな?」

      自身と似た顔に酷く動揺しているのか、親の仇を見るような目で睨み付ける一松の前に立ち塞がり、仮面の男ーーおそ松いわく、じぇいそんと呼ばれる男ーーへと手を差し出す。

    「じぇいそんは犯人じゃないってばぁ」

      拗ねたようにおそ松が唇を突き出し、マスクを持つ腕に絡み付く。間を挟んでチョロ松までもが抗議の声をあげるが、この際公平な判断力を失っている男の声は無視だ。
      訝しげに目を細める仮面の男にぴくりと青筋が額に浮き立つが、十四松は笑顔を絶やさずおそ松へと説得を試みた。

    「うん、念の為だよ。これが俺の仕事だからさ。……あ、それにほら!  科学的に証明出来れば、一松警部も納得してくれると思うし」

      ね?  と極力柔らかな声音で諭し、どうどうと一松を宥めていたトド松も勢いよく頷く。
      渋るような仕草を見せるが、どうやら仮面の男は判断をおそ松に委ねるようだ。チラリと視線をおそ松へと向け、頷くのを確認してからそっとソレを差し出した。
      すぐに返すからね。と預かり、自身の仕事道具が詰め込まれた鞄へと歩みを進める。

    「納得するなんて一言も言っていない」

      十四松の後を追いながら不機嫌そうに一松が呟き、キャッキャウフフと未だ花弁を散らす三人組を鋭い視線で突き刺した。トド松は相も変わらず忙しなくツッコミに走り、十四松は苦笑を相槌に変える。

    「まぁそう仰らずに。将を射んと欲すれば先ず馬を射よって言うでしょう?」

      ああ言った方が効果的なんですよ、彼には。と手に持つマスクを見せ、得意気に笑って見せた。

    「だが意外だな。あの探偵に骨抜きにされてる奴等は揃いも揃って援護をしたがるのに……アンタは違うのか?」

      和やかな雰囲気は感染するように次々と現場に居る人間を穏やかな表情にさせ、幻覚か、室内は花畑でも見えてきそうな程に平和的である。だが反して死体が横たわる側で鑑識用具をひろげる十四松の周りは、変わらず冷たく湿った空気が流れているままだ。それでもなお通常業務を続ける姿に、一松は感心したように十四松の背中を眺めた。

    「好きですよ、俺も」

      保存用に入れられたパッケージに文字を綴りながら、振り返らずに十四松が答える。

    「恥ずかしながら、けっこう本気なんですよねぇ」

      照れくさそうに笑い声を漏らすが、指紋を採取し始める手は止まらない。その周りとは違った行動ーー正しい業務ではあるのだがーーに一松はパチリと瞬きをし、無言のままその光景を眺め続けた。

      *

    「あちゃー……」

      死体現場は誰が用意したのか、既に立食パーティーのように華やかな内装が施されている。一松と十四松以外、トド松さえもが楽しげに輪の中に溶け込み、談笑が場の空気を和ませていた。その中での、場にそぐわない十四松の声は周囲の目を異様に惹き付けた。

    「どうしたんだね?  十四松君」

      片手にシャンパングラスを持つチョロ松が、連れをエスコートするように、おそ松の腰に腕をまわし顔を出す。その隣に立つ仮面の男は、落ち着くのか返却された仮面でまた顔を覆い、不思議そうに首を傾げた。

    「あってはならない事が起きたみたいで……」

      うーん。と困ったように笑顔を曇らせ、十四松が採取した指紋をテーブルクロスへと並べていく。

    「なになにぃ?」

      口のまわりに食べかすを付けたおそ松が、頬一杯に食べ物を詰め込みながらも興味深そうに十四松の隣へと立つ。隅で全体を眺めていた一松も駆け寄り、腕を組みながら並べられたものに目線を落とした。
      机上に並べられたのは害者のスマフォデータを映し出すノートパソコンに、繋がれたスマフォと小型印刷機。フィルムに挟まれた指紋がそれぞれ隣り合うように二つ並べられ、凶器となる血濡れの包丁が一際存在感を放っていた。透明な袋に入ったそれは、入れられた際に付着したであろう血が生々しくこびりついている。
      それらを眺め、再度十四松は考え込むように唸った。

    「こんなに机にひろげて……何か分かったのか?」

      何だ何だと談笑に夢中になっていた人員も集い、十四松の周りを囲むように円を描く。

    「我々にとっては良い話であり、おそ松君とそこの彼にとっては……悪い話になるかもしれません」

      ゆったりとした動作で仮面の男を指差し、深く濁らせた双眸がその人物を捉えた。

    「え?  ……ん?  どういう事?」

      困惑した表情を浮かべたおそ松がおずおずとチョロ松と仮面の男の裾を掴み、小さく首を傾げる。

    「……結論から言うと、残念ながら凶器から検出された指紋と、そこの彼のマスクから検出された指紋が……一致したよ」

      二つのフィルムを手に取り、重ねて見せる。それは確かに細かな皺までもが一致し、同一人物のものから採取出来る物と思われた。
      突然の重要参考人の登場に、周囲がざわめく。当の本人も内容を理解するのに時間を要しているのか、時を止めたように身を固くしていた。

    「……え?  まさか。何かの間違いじゃない?」

      珍しくおそ松の眉尻が下がり、粘りけのある視線を向けながらひそひそと囁きあう周囲に抗議する。
      悲しげな表情を浮かべた十四松は深くため息をつき、ノートパソコンへと視線を集めるように開いた画面を周囲に見せつけた。

    「今回の害者は、チョロ松警部が言った通り、大変有名な企業家です。……しかし、こんな一面がありました。一松警部、大変お手数ですがここの一文を読んでいただけますか?」
    「ん?  ああ。……今後の利息は四十パーセントとする。それ以下は認められない。返せない者は家、土地等担保に置き……おい、これ……」
    「そうです。害者は企業家である表の顔と、法外な利息で取り立てる、謂わば闇金と呼ばれる人間と深く関わりがある裏の顔があったのです」

      これは彼が管理しているデータベースから抜き出したものですが……。とおもむろに小型印刷機から一枚の用紙を抜き取り、列べられている名簿の一人に赤いマーカーで線を引く。

    「おそ松君、君が借金している先もどうやら彼の系列だったみたいだよ」

      他者を黒く塗り潰せば、おそ松の名前が記載された欄だけが浮きだつ。

    「しかし、何故彼が……?」

      実名は不明だが、借金をしていない仮面の男が何故わざわざ犯行に及ばなければならなかったのか。接点が見付からない不可思議な疑問に、チョロ松が問う。

    「これはあくまでも俺の推測ですよ。一松警部はご存知ないかと思われますが、彼は、必ずと言っても良い程おそ松君が登場する場面によく現れますね?」

      そう言えば。と呟きながらトド松も過去の記憶を掘り起こし、仮面の男を見つめる。

    「おそ松君、君は彼と連絡を取り合って、現場に来るのかな?」

      至極柔らかな口調は、先程の威圧的な要素をかき消す。

    「っ……して、ない……けど!  でも!」
    「お聞きしましたか?おそ松君は彼と連絡を取り合っていないのです。でも何故か彼は現れる。……それって、ストーカーじゃないですか?」

      ざわめく周囲におそ松は必死に否定するが、和やかな雰囲気が一変した空気では耳を傾ける者は居ない。
      最後の望みとチョロ松に助けを求めるも、口を一文字に結んだチョロ松は、考え込むように視線を反らしてしまった。

    「経緯はこうです。彼はある日、好意を寄せる相手に借金があることを耳にしてしまった。しかし彼にはそれを肩代わりする程の財力は無い。なんとかしてやりたいと思いつつも法外な利息で借金が膨らむ一方、彼はあることに気付いたのです。金融を裏で操っている人間を消してしまえば、彼は救われるのではないか……と。害者に恨みを抱いている者は数多く居るでしょう。どうせ警察はその中から犯人探しを始めるに違いない。ならば無関係の自分に疑いが掛かる確率はゼロに等しい。だから彼は実行に移ったのです。ただ愛する人を助けたいという名目の下、純粋に、頼まれてもいないというのに」

      違いますか?  と緩急自在な語りは最後、静かに問い掛ける。
      仮面の男は勢いよく顔を左右に振り否定をし続けるが、十四松はまた困ったようにため息を吐き、自分の元居た場所に異動した。

    「じゃあ、何で指紋が一致するんでしょう?」

      証拠となるフィルムを上げ、首をかしげる。それに対して仮面の男は言葉を詰まらせ、下を向いてしまった。

    「……詳しい話は、署で聞かせてもらおうか」

      沈黙を破るようにチョロ松が仮面の男の両腕を包み、玄関口へと向かう。大切な友人を失った悲しみにおそ松はボロボロと涙を流し、トド松に慰められながらも同行を促された。

      数台のパトカーが小さくなり、十四松と二人だけの空間になった所で、一松が重い口を開いた。

    「あの男は、本当にそんな事をする奴なんだろうか」

      独り言にも似た呟きに、十四松が振り向く。

    「俺には到底、そうとは思えない」
    「……お言葉ですが、捜査に私情を挟むのは如何なものかと思いますよ、警部」

      淡々とした喋りは、おそ松が居たときと打って代わり冷徹さをうかがわせる。その変わりように一松は眉間にしわを寄せ、十四松を凝視した。

    「どちらにせよ、目に見えないものを明確に証明するのは、難しい事ですからね。おそ松君には可哀想なことをしてしまいましたが……証拠がある以上……なんとも」

      機具が詰め込まれた鞄を背負いなおし、それでは。と一礼し十四松は一松に背を向けた。
      マスクから血痕や指紋を採取する頃から言い様の無い胸のつっかえが一松の中で渦巻き、十四松の背中を眺める度、その薄気味悪さが霧状に肌を伝う。それから逃れる為、一松は最後に十四松の背中に声をかけた。

    「アンタ……なにもんなんだ?」

      ゆるく振り向いた十四松は暫し無言のまま瞬きを繰り返すが、体ごと振り返らせ、人好きのする笑みを浮かべて見せた。

    「ただの、恋する鑑識官ですよ」

      そう冗談めかしたように答えると、再び一礼し、今度は振り返ることなく自身の車へと姿を消してしまった。

    END

     

     

     

    いつもここで感想をいっぱい語りたい衝動に駆られるのですが、もし万が一読んでる途中な人の目に入ってしまい多大なネタバレをしてしまったら申し訳ないのでたいしたコメントが書けなくて歯がゆいのですが…(その分あーちゃんにはもう勘弁してくれってぐらい愛と感想をぶつける様にしていますが)

    まさか…こう来るとはな…(心臓を押さえながら)

    素晴らしいメリバでしいたくこういうの大好きです…いちばん私情を挟んでいるのは誰でしょうねって言う話ですよね…わかります…!

    しいたくがあほ漫画を描く→あまどさんが素晴らしい小説で続けてくれるっていうわいがめちゃくちゃ幸せになるこの企画、後63回は続けたいと思います★(逃げるあまどさんの足首を掴みながら)